身近な人がギャンブル依存症なのでは?と心配な方へ
“ギャ ンブルしたい気持ちを抑えられない” “ギャンブルをするために、借金をする” “ギャンブルを減らそう、やめようと努力してみたがダメだった” このような経験がある人はギャンブル依存症という病気かもしれません。近年では、インターネット環境があれば簡単にギャンブルが可能となったため、一層身近に楽しめるようになりました。実際、ギャンブル依存症は決してまれな病気ではなく、平成29年度に行われた全国調査によると、生涯においてギャンブル等依存が疑われる者の割合(一生のうちに一度はギャンブル障害を経験する人の割合)は成人の3.6%と推計されています。ご家族、同僚、友人など身近な人もギャンブルに関する問題を抱えているかもしれません。
では、身近な人がギャンブルがやめられなくて困っているとき、どのようなサインが現れるのでしょうか。そして、どのようなサポートが可能でしょうか。詳しく見てみましょう。
身近な家族が、“ひょっとしてギャンブル依存症なのでは・・”と心配になる時には、“病気というほど重い事ではないのではないか”などと思いたい気持ちも、同時に出てくるかもしれません。これはある意味自然なことで、重大なことだからこそ、しっかりと向き合うことが難しかったり怖かったりするからだと考えられます。重大なことと向き合うには、安心感が持てること、つまり安心につながる知識を持つことが必要です。
ギャンブル依存症は、糖尿病や高血圧のような生活習慣病に似た慢性疾患といわれています。そのため、回復にはしっかりとした継続的な取り組みが必要です。つまり、一度やめるだけではなく、やめ続けることが大切です。そして、やめ続けるためには、正直に自分の気持ちを言える場所があることや、孤立しないことが大切です。
家族にとって、最も直面しやすい問題が、「借金」と「嘘」です。借金が明らかになったときに、どのように対処すべきか、とても迷われるかもしれません。大事なことは、「焦って借金を清算する必要はない」ということです。事情を確認し、専門家に相談をする時間は存在しています。本人の借金を肩代わりしたくなるかもしれませんが、ギャンブル依存症の場合、その選択は専門家と相談して決めていく方がよいでしょう。
また本人は、借金の影響などから、ギャンブルをしていることに後ろめたさを感じやすく、ギャンブルの事実を隠す、つまり周囲に嘘をつかざるを得なくなります。その嘘を隠すために、さらに嘘を重ねなければならない状況にも陥りやすいと考えられます。
《家族の中でギャンブルの問題を抱えている人には次のような特徴がみられます》
- 帰宅時間が遅くなる
- 休日出勤が増える
- 嘘が増える、ギャンブルの事実を隠している
- 給料額を明らかにしない
- 小遣いがすぐになくなる、足りないと言う、お金の無心が増える
- 借金している
- 財布に入っていたお金や、家の物が知らないうちに無くなっている
- 「ギャンブルをやめる」と約束しても、しばらくするとギャンブルを再開してしまう
※ 家族から見えるギャンブル依存症のサインについて、ギャマノンという自助グループが22の質問をまとめています。併せてご覧下さい: http://www.gam-anon.jp/
娯楽としてギャンブルをする人もいますが、若いときにギャンブルを始めると、ギャンブル依存症のリスクも増えるため注意が必要です。「大学に入って友人に誘われて」、「彼氏とのデートで」、「会社の先輩に連れられて」、というようなきっかけでギャンブルと出会い、ビギナーズラックを経験して、のめりこんでいくようです。
《友人でギャンブルの問題を抱えている人には次のような特徴がみられます》
- ギャンブルを優先して予定をキャンセルされる
- ギャンブル場でデートすることがしばしばある、ギャンブル以外の遊びが少なくなる
- 授業やテストをすっぽかすようになる
- ギャンブルの話題が多い
- アルバイトをしていてもお金がない
- お金を貸してと頼んでくる
《同僚でギャンブルの問題を抱えている人には次のような特徴がみられます》
- 遅刻、欠勤が増える
- 仕事中うわの空
- ギャンブルの話題が多い
- 同僚達にお金を貸してと頼んでくる
- 会社のお金に手をつけている
※ ギャンブル依存症のサインは他にもあります。詳しくはギャンブル依存症で悩む家族・友人の為の自助グループであるギャマノンのホームページをご覧ください: http://www.gam-anon.jp/
【対応のポイント】
ギャンブル依存症を抱えている人達に共通していることは、ギャンブルにのめり込んでお金が回らなくなるということです。そうなると本人もギャンブルをしていることに後ろめたさを感じてくるため、ギャンブルの事実を隠す、つまり周囲に嘘をつくことも珍しくありません。この状態から回復するためには、まずは専門相談窓口や専門医療機関に相談することが大切になりますが、彼らの多くは病気の認識が薄く、借金問題の解決に関心があります。しかし、借金問題を解決しても、借金の原因であるギャンブル依存症に向き合わなければ、再び借金を繰り返し問題は悪化していきます。そのため、周囲が安易に金銭的な援助をしないことや、専門家と相談しながら借金問題にとり組むことが重要になります。
本人が自ら気づいて専門相談窓口や専門医療機関に繋がれば理想ですが、依存症は「否認の病」と言われることもあり周囲からの働き掛けが重要になってきます。周囲から本人へ「問題が悪化する前に相談してみたら?」「借金の悩みを聞いてもらったら?」と、専門機関に繋いでいく方向で話を持っていきましょう。「ギャンブルに依存していない?」「ギャンブルがいけないんだよ!」など、問題をストレートに指摘されると却って意固地になる場合もあるので注意が必要です。また、まずは周囲の人が相談機関に行き、専門家と解決に向けて一緒に考えるだけでも進展があるでしょう。
【少しでも気になったら・・・】
もし、“身近な人がギャンブル依存症なのでは・・”と気になられた際は、早めの相談を心がけましょう。ギャンブル依存症は、他の病気と同様に、早めの対応が回復への近道です。相談先として、専門医療機関や、お住まいの地域(市区町村)の専門相談窓口があります。
会社員や大学生の場合、会社内の健康管理センターや大学の相談室も活用できるでしょう。また、ギャンブル依存症に関する問題を抱える家族が集い、ギャンブル依存症への理解とサポートを得られる自助グループを利用する方法もあります。Gam-Anon(ギャマノン)という自助グループが代表的なもので、世界中で活動しています。詳しくは、自助グループについて をご覧ください。
参考文献:
- 厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 久里浜医療センターHP
http://www.kurihama-med.jp/outpatient/clinic/cl_gamble_toha.html - 樋口進 松下幸生 “ギャンブル障害の疫学調査、生物学的評価、医療・福祉・社会的支援のありかたについての研究” 国内のギャンブル等依存に関する疫学調査(全国調査結果の中間とりまとめ) 障害者対策総合研究開発事業(国立研究開発法人日本医療研究開発機構) 2017
- GAM-ANON HP
http://www.gam-anon.jp/ - GA日本インフォメーションセンターHP
http://www.gajapan.jp/ - 厚生労働省依存症対策HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html - N.A. Dowling, S.S.Merkouris, C.J.Greenwood, E.Oldenhof,J.W.Toumbourou, G.J.Youssef(2017). Early risk and protective factors for problem gambling: A systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. Clinical Psychology Review, 51, 109-124.