ご家族への支援
依存症に悩む家族が受けられるサポートは大きく2つに分けることができます。ひとつめは、専門機関・専門家による支援です。代表的な機関としては、精神科病院、精神保健福祉センターなどがあります。精神科病院は全国に数多くありますが、依存症に関する専門的治療を行っているところは家族支援も行っている場合が多く、依存症の基本的な理解をはじめとする様々な情報や助言を得ることができます。依存症の治療を行っていない精神科病院もあるので、必ずホームページなどで事前に確認するようにしましょう。精神保健福祉センターは、メンタルヘルスに関する高い専門性を有する行政機関で、全国69箇所に配置されています。専門相談員による個別相談だけでなく、家族教室も開催している機関が多いので、依存症に関する知識や情報を得ることにも役立つでしょう。
ふたつめは、自助グループです。上記の専門機関とは異なり、依存症の問題を抱えた当事者家族が主になって活動を行っています。代表的な活動としては、アラノン(アルコール家族)、ナラノン(薬物家族)、ギャマノン(ギャンブル家族)、薬物依存症家族会などがあります。アラノン、ナラノン、ギャマノンは、世界中に数多く存在する自助グループで、12ステップ・プログラムという方法を用いて依存症に悩む家族自身の回復を支える活動をしています。薬物依存症家族会は、主に薬物依存症者本人を対象とした回復施設であるダルクと連携を保ちながら活動を行っています。多くの家族会では、専門家を招いて勉強会を開催したり、当事者家族がそれぞれの経験を語るミーティングを行ったり、家族相談を行ったりしています。また、アルコール依存症の場合は、断酒会という自助グループでは、当事者のみでなく家族も参加することができ、回復の進んだ当事者や家族の方からアドバイスをうけることができます。
専門機関と自助活動のどちらが良いということはありません。相性もあると思いますので、まずは身近なところから足を運んでみて、自分にしっくりする場所を見つけ出せるとよいでしょう。両方を併用してもまったくかまいません。家族が非難されるのではないか、警察に通報されるのではないかなどの心配が頭をよぎるかもしれませんが、非難や説教、通報ではなく依存症の治療や相談を行うというのが専門機関のあるべき姿です。専門機関の職員はみな守秘義務を負って相談支援を行っていますし、自助活動のメンバーはみな同じ体験を持つ仲間です。勇気を出して助けを求めたのに、満足できるような対応をしてもらえなかったということもあるかもしれませんが、あきらめないでまた別の場所を探してください。薬物やアルコール問題の解決は家族の力だけでは非常に難しいのです。たとえ依存症かどうかはっきりわからなくても、気がかりに思ったらまずは家族が外に助けを求めることが大切です。
参考文献:
1.近藤あゆみ:第8章 薬物依存症者をもつ家族に対する理解と相談支援の方法,編集 和田清,精神科臨床エキスパート 依存と嗜癖-どう理解し、どう対処するか,株式会社医学書院,127-138,2013.
2.近藤あゆみ:第3章 疾患や状態の特性に応じた家族支援 薬物依存症者をもつ家族に対する支援,精神科臨床サービス みんなが元気になれる家族支援Ⅰ,17(1),70-74,2017.