アルコール依存症のための薬物療法

アルコール依存症の治療は、通院や自助グループ参加などの心理・社会的治療が基本ですが、それらを補完する治療として薬物療法があります。薬物療法は、再飲酒防止を目的にしています。日本で使われている薬剤は主に2種類、3薬剤あります。

 

I.抗酒剤【®ノックビン、®シアナマイド】

服用後に飲酒すると、下戸の人がお酒を飲んだ時のように、吐き気や顔面紅潮、頭痛等の反応が起こります。ただし飲酒欲求を抑える作用はありません。朝、家族の前で服用することで、一日断酒を誓うとともに、家族を安心させるという効用もあります。心臓や肝臓等がとても悪い患者さんや妊婦には禁忌です。またアルコールの入った食品、栄養ドリンク剤などでも反応が出ることがあるので避けるようにしましょう。

 

II.飲酒欲求軽減薬【®レグテクト】

脳に働き飲酒欲求を抑える作用がある薬剤です。服用後に飲酒しても、抗酒剤のような不快反応はありません。肝障害の患者さんにも使いやすく、抗酒剤と併用することも可能です。一方、副作用として下痢(14.1%)、お腹の張り(1%)、悪心(0.5%)といった胃腸障害(16.1%)であり、その他、腎障害の患者さんと高齢者も慎重投与の対象となっています。また抗酒剤同様に、心理社会的治療と併用することで断酒維持効果を示す薬剤であり、ただ単に服用すれば断酒できるものではありません。

 

参考文献:

日本新薬.レグテクトインタビューフォーム(第5版).2015年7月改定