アルコール依存症ってどんな病気?
依存症は、特有な依存行動・症状とその結果引き起こされる健康・社会問題の組み合わせです。アルコール依存症の場合、依存行動・症状の例としては以下のようなものがあります:
- 何をしていてもお酒が頭から離れない
- 飲酒量が以前に比べて大幅に増えた
- お酒がきれてくると手が振るえる・飲みたくなる
- 飲酒量を減らせない
- 朝から飲み続けることがある
アルコール依存症のこのような飲み方は、ほぼすべての臓器に悪影響を及ぼすだけでなく、けがの原因にもなります。また、アルコールはうつ病や認知症など、精神的問題も引きこします。世界保健機関によると、アルコールは200以上もの病気の原因となる、とのことです。さらに、社会や家族にあたえる影響も大きく、暴言・暴力、飲酒運転、失職、離婚、虐待、子供の発育に対する悪影響などが頻繁に認められます。
飲酒する人は誰でもアルコール依存症になりえます。しかし、アルコール依存症になりやすい人と、なりにくい人がいます。前者はリスク要因を、後者は防御要因を持っていると理解されています。例えば、体質面からみると、もともとお酒に強い人はなりやすく、飲酒後に顔の赤くなる人は、なりづらいことが分かっています。その他、遺伝、心の病気、環境要因など様々な要因について研究されています。
アルコール依存症は回復可能な病気です。しかし、留意しておかなければならない点があります。それは、再発という特性です。それは、期間の長短を問わず一旦断酒しても、再び飲み始めれば、程なく元の飲酒状態にもどってしまう、という特性です。そのため、アルコール依存症から安全かつ安定的に回復するためには断酒継続が必要です。しかし、最近、軽症な場合には、減酒の可能性も検討されています。
アルコール依存症になると、お酒の効果が切れ始めると辛い離脱症状が出たり、断酒時にはお酒で紛らわしていた問題を思い出したり、とお酒を飲んでいない時にも不都合が起こります。それ故、お酒をやめるのが難しく、お酒の問題を指摘されると、「そんなことない」と過小評価したり、否定したくなってしまうのです。また、飲酒を続けたいという欲求や社会的偏見の対象とされることへの心配などから、依存症治療のために医療機関を受診しない傾向があります。アルコール依存症の治療は日進月歩しています。心理的アプローチが改良され、全く新しいメカニズムによる治療薬の開発も進んでいます。また、回復を支援する自助グループや回復施設もアルコール依存症に悩む方の来訪を待っています。
もし、ご自分がアルコール依存症かもしれないと思ったら、相談・受診をしてみましょう。早ければ早いほど、健康への影響は小さく、回復しやすいことを医学的エビデンスが示しています。