日本人の飲酒傾向
国内のアルコール消費量は減少傾向にある
国税庁による報告1によると、わが国のアルコールの販売量は平成8年度の966万㎘をピークとして平成28年度は841万㎘へと減少しています。成人1人当たりの酒類消費量も、平成4年度の101.8ℓをピークとして平成28年度には80.9ℓとおよそピーク時の8割程度に減少しており、全体的にはアルコールの消費量は減少傾向にあるといえます。酒類の種類ではビールの消費量が最も多いですが、平成1年と平成28年を比較すると、ビール、清酒が減少しリキュール類、発泡酒が増加しており、ビールや日本酒から、チューハイやいわゆる第3のビールに消費が移行しているようです。特に最近は、「ストロング系」と呼ばれる9%のチューハイが増えています。9%のチューハイは500ml缶1本で36gもアルコールを含有しており、下記の危険な量の飲酒に容易に到達するため、健康上の影響が強く懸念されます。
男性、特に若年男性では習慣的に飲酒する人が減少傾向にある
わが国の飲酒習慣については、国民健康・栄養調査により、毎年飲酒習慣や飲酒量が調査されています。週3回以上飲酒し、飲酒する日は日本酒1合相当以上の飲酒をする者を習慣飲酒者と定義した場合、平成28年度の調査2)では、男性では33.0%が習慣飲酒者でした。平成元年の調査では、習慣飲酒者の割合は男性の51.8%であり、調査手法が異なるため単純な比較はできないものの、男性では習慣飲酒者が減少していると考えられます。特に若年層でその傾向が顕著です。習慣飲酒者の割合は、男性では50-60代、女性では40-50代にピークがみられます。(図1)
図1 平成元年と平成28年における各年齢・性別による習慣飲酒の割合
(厚生労働省 国民健康・栄養調査による)
習慣飲酒:週3回以上飲酒し、飲酒する日は日本酒1合相当以上の飲酒をする者
飲酒習慣の男女差が小さくなっている
一方、先の調査では、平成28年度に女性の8.6%に習慣飲酒があり、これは平成元年の6.3%より増加しています。特に20代の若年者で男女差が非常に小さくなっています。現在はアルコールによる健康問題を持つ者は男性が圧倒的に多いですが、将来的にこの男女差は小さくなっていくと考えられ、女性のアルコール依存症者が増加することが予想されます。
危険な飲酒は男性の14.6%、女性の9.1%に見られる
1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上,女性20g以上の飲酒は生活習慣病のリスクを高めるとされています。このような危険な飲酒の習慣を持つ人は、平成28年度の国民健康・栄養調査では男性の14.6%、女性の9.1%に認められました。男女とも40-50代に最も割合が多い結果でした。
生涯でアルコール依存症に罹患する人は約1%(107万人)
2013年に行われたわが国の成人の飲酒行動に関する全国調査によると、ICD-10によるアルコール依存症の生涯経験者数は、男性の1.9%(94万人)、女性の0.2%(13万人)であり、推計数は男女合わせて107万人でした3)。また、現在ICD-10のアルコール依存症の診断基準を満たす人は、男性の1.0%、女性の0.1%で、計57万人と見積もられています。
参考文献:
1. 国税庁課税部酒税課:酒のしおり.平成30年3月(http://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2018/index.htm)
2. 厚生労働省:平成28年国民健康・栄養調査(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h28-houkoku.html)
3. 尾崎米厚:アルコールの疫学―わが国の飲酒行動の実態とアルコール関連問題による社会的損失.別冊・医学のあゆみ アルコール医学・医療の最前線UPDATE:43-47, 2016.